鴻(こう)ものがたり
@民話の舞台となった場所:下の町 鴻八幡宮
A民話の謎:お宮がさびれる原因であるコウノトリは退治されず、問題は解決していません。ストーリー自体がどうもすっきりしてなくて、何が言いたいのか分からないお話です。
B「あらすじ」:むかしむかし、お宮様に大蛇がいた。またこの宮山には、鴻の鳥がたくさんいて、雛のある時期には大蛇に狙われるため大変荒々しく、参詣者たちも難をおそれるあまり次第にその数が減り、さびれていくばかりであった。心ある人々はこれを憂い、誠に神力があるならば、この難をのけたまえと祈った。すると、その夜、夢の中に氏神が現れ、「汝等の祈るところ至極なり。明日、辰の一天(午前7時ごろ)に難を除くゆえ、汝等出てこれを見るべし。」とお告げがあった。これはおかしなこともあるものだと、次の日の朝、参拝してひざまずき、心をすましていると突然、神殿がゆれ動き大蛇が一匹現れ出た。あれよあれよと見ているうちに、大蛇は鴻の巣のかかっている大木に登り始めた。これに気づいた鴻の鳥たちは、一斉に襲いかかり、激しい戦いの末、ついに大蛇をしとめてしまった。
Q:どこかすっきりしないお話になっているのはなぜでしょうか?
A:本当は鴻八幡宮の縁起(お宮のできたはじまりやその後の歴史の説明)と思われますが、本来のお話からとても大事な部分がかけ落ちています。例えば参詣のさまたげになっているコウノトリが退治されず、結局、問題は未解決のままに終わっています。
Q:鴻八幡宮はどこにありますか?
A:児島下の町の甲山(こうやま 108m)の麓にあります。秋のだんじりまつり(18台が集結)と夏の輪くぐりで有名な神社です
Q:どんな部分がかけ落ちているのでしょうか?
A:このお話には有名な元ネタがあって、起承転結がちゃんとあるお話です。それは次のようなものです。興味のある人は読んで見てください。
【参考】「異類婚姻」「蛇の婿入り(コウノトリの卵型)」のお話の構造
・百姓が蛇に追われるカエルを助けてやる(「カエルを見逃してやったら娘をやるぞ」)
・若者が娘の家に出入りするようになる
・そのうち娘と若者は夫婦になって娘は妊娠する
・山伏が若者の正体が大蛇であることを教えてくれ、解決の知恵をさずけてくれる
・娘の両親は若者に「身ごもっている娘に卵を食べさせてやりたい。裏山にコウノトリの巣があって大きな卵がある」と話す
・若者は裏山に行き、正体をあらわして蛇になり木をよじ登る
・蛇は繁殖期の気の荒いコウノトリにつつかれて転落して死ぬ。
・両親は蛇の婿さんを厄介払いできたといって喜ぶ。
・山伏はどこへともなく、ぴょんぴょんと跳ねて帰っていく(山伏の正体は助けてもらったカエルであった)