プロローグ


児島民話通り

〜児島の伝説の謎解きQ&A〜

 

児島の民話

 

 

はじめに(郷土の伝説に親しみ、理解するために)
児島駅前の民話通りには児島の地に古くから伝わる九つのお話が紹介されています。それぞれの話には具体的な伝承地があり、それらは私たちのよく知っている場所なので、これらの話は民話の中でも伝説というジャンルだと言ってよいでしょう。
その中には「船幽霊」「彦九郎の樽流し」など児島の人が昔から聞きなれた伝説があります。「船幽霊」は源平合戦にまつわるとても古いもので、一種の怪談です。しかし、目の前に広がる海とともに生きてきた私たち児島人の先祖が「どのようにして災いを避けて生きてきたか」といった知恵やものの考え方の根本がよくわかる話です。「彦九郎の樽流し」は江戸時代になって急激に変わった世の中、複雑な政治や経済の問題を物語るもので、児島の人たちが色々な時代の色々な事件に直面しながら苦労して生活を守り、地域を作ってきたことがわかります。
またあまり聞きなれないですが、興味深い話もたくさんあります。これらの話を理解するには少し勉強が必要です。例えば「鴻(こう)ものがたり」を理解するには伝説や昔話の仕組みなど民俗学に関する勉強、「七人の王子」を理解するにはお大師さま信仰よりも古い、熊野信仰に関する勉強が必要です。「由加の鬼塚」は実際に考古学的な遺跡が残っていて、今後も学術的な検討が必要で、理解するには観音信仰に関する勉強も必要です。「金浜の伝説」は伝説の宝物が倉敷市の重要文化財として物語の舞台となった寺に今でも実際に残っているという大変貴重な例で、文化財保護に関する勉強も必要です。「金の竜と青い竜」を理解するには地質や鉱物、化石に関する理科的な好奇心が必要です。加えて竜王山や大槌島のような児島の人がシンボルとしてとらえている景色への親しみ、景観学の勉強も必要です。「くすみの哀話」を理解するには「自分が今住んでいる町や村はどのようにしてできたか」といった興味関心、城下町や港町や漁村など地域の形成を研究する人文地理学のような勉強が必要です。「太閤の二つ岩」を理解するには豊臣秀吉の時代に全国が築城ブームに巻き込まれていたという、かなり専門的な歴史の勉強が必要でしょう。
すなわち、郷土に伝わる伝説を理解するには、皆さんが子どもの頃から生活の中で経験してきたこと、小学校・中学校、高等学校、その後の高等教育で勉強する知識を学習成果として精一杯に使いこなすことが必要で大事だということなのです。
読者のみなさんも色々な興味関心・好奇心を働かせながら児島の伝説の謎を考えていくと自分が住んでいる地域のことに興味がわくと思います。

 

 

解説者:尾崎聡

 

七人の王子 鴻ものがたり 由加の鬼塚
金浜の伝説 金の龍と青い龍 くすみの哀話
太閤の二つ岩 船幽霊 彦九郎の樽流し